モータースポーツ好きの父の影響で、7歳の時にサーキット併設の遊園地で初めて電動バイクに乗りました。最高時速は15kmほどでしたが、夢中になって楽しんでいたことを今でも鮮明に覚えています。その後、テレビで世界最高峰のバイクレースであるMotoGPを見たとき、「めちゃくちゃかっこいい!自分もこうなりたい!」と強く思い、11歳で初めてエンジン付きのバイクに乗り、本格的にレース活動を始めました。自分はゼロからのスタートでしたが、同年代のライダーたちは幼少期からポケットバイクに乗っていたため経験の差が大きく、初めてのレースでは上位8人に周回遅れにされ、何が起きているのかも分からないままレースが終わりました。それが本当に悔しくて、差を埋めるために毎朝のように河川敷でオフロードバイクの練習を重ねました。父よりも早く起きて、父を起こさなければ練習に連れて行ってもらえなかったので大変でしたが、そのおかげで短期間で大きく成長できたと思います。そして2024年には、YAMAHA R3 bLU cRU Asia Pacific Championshipに参戦し、日本、タイ、オーストラリアの3カ国で開催されたシリーズでチャンピオンを獲得することができました。2025年は、さらに上のクラスであるYAMAHA R3 bLU cRU FIM World Cupに参戦します。よりハイレベルな舞台での挑戦となりますが、これまでの経験を活かし、世界の強豪たちと戦い抜きたいと思っています。



GO BEYOND な 人
奥貫翔(オクヌキカケル)
レーシングライダー
海外にチャレンジした理由は、自分の夢であるMotoGPクラスでチャンピオンを獲得するためです。幼い頃からバイクレースに魅了され、トップライダーたちの走りに憧れてきました。MotoGPの世界で戦うためには、技術や経験はもちろんのこと、海外での適応力やコミュニケーション能力も求められます。特に英語は、チームとの意思疎通やメディア対応、レース戦略の理解など、あらゆる場面で重要になります。これまで英語を学んできましたが、実際に海外に行き、英語を使う環境に身を置くことで、より実践的に英語を学べると感じています。昨年、初めて年間を通じて海外のレースに参戦させてもらった際には、英語のミーティングやアドバイザー、メカニックとの会話で専門的な技術用語が使われるため、内容を理解するのが難しく戸惑うこともありました。しかし、積極的に英語で話しかけたり、レース映像を見ながら英語の解説を聞いたりすることで、少しずつ理解できるようになりました。また、海外でのレースに挑戦することで、世界のトップレベルのライダーたちと直接競い合い、自分の課題や強みを明確にすることができ、自分をより成長させることができると実感しています。
2024年のレースはチャンピオンを獲得できたものの、骨盤骨折という大怪我を負った大変なシーズンでした。怪我を負ったのは、5月にタイで行われた第2戦でのことです。3月の開幕戦ではレース1、レース2ともに優勝という結果で自信もありましたが、第2戦のレース1では地元ライダーの速さに苦戦しながらも粘り、2位を獲得。しかし、レース2で転倒し、後続ライダーに轢かれて骨盤を骨折してしまいました。医師からは、バイクに乗れるまでには2〜3ヶ月かかると言われましたが、その際にスマホで骨盤骨折について調べていたところ、過去に騎手の武豊選手が同じ骨折を負い、2ヶ月で復帰したという記事を見つけました。次戦はちょうど2ヶ月後だったため、「自分も絶対に復帰する」「必ず間に合わせる」という強い意志で、リハビリとトレーニングに励みました。そして7月の第3戦にギリギリ間に合い、レース1は5位、レース2は6位で合計21ポイントを獲得することができました。最終的に9.5ポイント差でチャンピオンを獲得できたため、このポイントがなければチャンピオンには届かなかったかもしれません。骨盤骨折という大怪我を乗り越えて掴んだこのタイトルは、自分にとってまさに「GO BEYOND.」でした。
GO-BEYONDER No.661

レーシングライダー
奥貫翔
2007年6月20日生まれ、茨城県つくば市出身。7歳から遊園地の電動バイクに乗り始め、11歳のときに初めてエンジン付きのバイクに乗って、レースの世界に足を踏み入れました。2024年には、YAMAHA R3 bLU cRU Asia Pacific Championshipでチャンピオンを獲得し、2025年はYAMAHA R3 bLU cRU FIM World Cupに参戦します。
Instagram:https://www.instagram.com/kake.ru0620
X(旧Twitter):http://twitter.com/kakeruokunuki31
2024年3月~11月 YAMAHA R3 bLU cRU Asia Pacific Championship シリーズチャンピオン