プロの俳優、演劇制作者(マネジメント)、作家、演出家として、東京を拠点に活動しています。もともと東京大学で演劇・劇場が社会に対してどのような形で貢献できるのかを研究していましたが、在学中から俳優養成所に入所し、大学卒業と同時にプロに転向しました。現在は新宿梁山泊およびProject Nyxというアンダーグラウンド演劇の劇団に所属しながら、俳優と裏方の両面から演劇創作を続けています。(アンダーグラウンド演劇=アングラ演劇とは:1960〜70年代に発展した前衛演劇です。劇場ではなくテントでの公演や、舞踏、マジックやストリップなど異分野の表現を積極的に取り入れながらの公演など、自由でダイナミックな表現を得意とします。)コロナ禍で演劇・エンターテインメント業界は大きな打撃を受けましたが、2023年から少しずつ活気を取り戻し、再び新たな挑戦ができるようになってきました。2025年には海外公演も決まり、アンダーグラウンド演劇という日本の文化を世界に向けて発信すべく奮闘しています。



GO BEYOND な 人
染谷知里(ソメヤチサト)
俳優・演劇制作者・劇作家・演出家
私が出演・制作しているアンダーグラウンド演劇は言語と肉体の両方をフルに駆使するアートであり、論理よりも感性・イメージを重視します。少々乱暴な言い方をすれば「考えるより感じろ」というタイプの演劇です。アングラに出会うまで、どちらかといえばずっと論理重視の世界に生きていたので、初めて公演を見た時にはそれまでの価値観が崩れるような衝撃を受けました。そしてその自由さ、熱量に魅了され、ここまで続けてきています。創作側にまわった今、私はアングラ演劇を日本発の演劇ジャンルとして世界に発信していきたいと強く思っています。日本の演劇は言葉の壁があり、なかなか世界で評価されるのが難しいのですが、アングラは言語を超えた表現を得意とするため海外にも挑戦しやすいのです。(私が所属している新宿梁山泊は20年ほど前、イギリス、フランス、アメリカ、ブラジル等で公演し、高い評価を受けました。)そして、海外での活動を通して、日本の演劇(特に私がメインのフィールドとしている小劇場)の抱える課題を少しでも解決したいと思っています。小劇場は予算が少なく、チケット代を上げるのにも限界があり、何か新しいチャレンジをするのは難しい状況ですが、中には本当に素晴らしい作品がたくさんあります。海外のカンパニー、地域劇団が採用している仕組みを日本に持ち帰ったり、海外に挑戦しようと思う同世代・下の世代の表現者に経験を伝えたり……今の閉鎖的な状況を打破するきっかけになりたいです。
2024年1月現在、私は目前のニューヨーク公演に向けて出演の準備および制作作業に奮闘しています。クラウドファンディングによる資金調達、現地スタッフとの調整、カンパニーのメンバーのビザ申請、制作備品のリストアップ・梱包、舞台美術・小道具・衣装の運搬に関するシミュレーションなどなど、次から次へと国内公演ではやらない作業が押し寄せて目が回りそうになることもあります。ですがカンパニーの仲間たちとともにひとつひとつ課題をクリアしていくたび「GO BEYOND.」=今までの自分を超えていけるように感じます。舞台は総合芸術であり、一人ではできません。共に創作するキャスト・スタッフ、観にきてくださるお客様、応援してくださるたくさんの方々によって支えられています。共演者とともに、スタッフと作り上げた舞台に立ち、お客様と同じ空気を共有しながら演じる瞬間、はじめて作品が完成するのです。生の舞台にしかない「その瞬間、目の前にいる人間から発せられる熱」は国や言語を超えても伝わります。舞台芸術の持つ可能性を信じながら、国境を越え、限界を超え、新しい作品の創作に挑み続けたいと思っています。
GO-BEYONDER No.635

俳優・演劇制作者・劇作家・演出家
染谷知里
東京出身。
東京大学文学部在学中から文学座附属演劇研究所に入所、卒業後は正反対の表現を求めてアングラ演劇の世界へ飛びこむ。現在はテント演劇を得意とするアングラ集団「新宿梁山泊」メンバーとして俳優・制作の両面で活動している。2023年には自身が作・演出を務める演劇ユニット「ちの湯」を旗揚げするなど、一つの肩書きにとらわれず活躍の幅を広げている。
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2024年
1月 Project Nyxニューヨーク公演『青ひげ公の城』(寺山修司作・金守珍演出) 同1月〜 NHK大河ドラマ『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』花魁・嬉野役
2023年
10月 新宿梁山泊赤坂サカステント公演『ジャガーの眼』(唐十郎作・金守珍演出)少年役 同6月 新宿梁山泊新宿花園神社公演『おちょこの傘持つメリー・ポピンズ』(唐十郎作・金守珍演出)保健所員役 ※上記2作により、新宿梁山泊は紀伊國屋演劇賞団体賞受賞 同3月 Project Nyx女歌舞伎『小栗判官と照手姫』三郎役
2022年
10月 Project Nyx『青ひげ公の城』(寺山修司作・金守珍演出)付人コプラ役 同7~8月 COCOON PRODUCTION 2023 『少女都市からの呼び声』(唐十郎作・金守珍演出)子宮虫・乞食役 同6月 新宿梁山泊新宿花園神社公演『少女都市からの呼び声』(唐十郎作・金守珍演出)一輪車に乗った島田雅彦役 同3月 Project Nyx女歌舞伎『さんせう太夫』づし王役
ほか舞台、CM、映像など多数