まず、私がコーチとして生きて行く事を決めたのは2000年11月11日にオーストリア ザルツブルク州カプルーンにあるキッツシュタインホルンスキー場で起きた登山電車事故に遭遇し、生還した経験からです。あの日は週末で、子供達のレースが行われる予定だったこともあり、多くの子供達がスキー場へ向かう為に電車に乗りました。その子供達、モーグルの世界選手権メダリストの選手、日本人10名など155名が犠牲になりました。事故後、街は静まり返り犠牲者の写真とロウソクが街中に置かれ、その状況を目の当たりにした時に自分が生かされたのには意味がある、未来ある子供達が大勢犠牲になった事を考えると、次世代の子供達、選手達に自分の培った技術や知識や経験を伝えることの重要性を感じ、当時、日本で歴代最年長として現役を続けていましたが、引退し指導に専念する決意をしました。コーチとしてスタートしたからには、ワールドカップ、世界選手権、オリンピックで必ず結果を出す選手を育てる事、誰からも愛される選手を育成する事、応援してもらえる選手にさせる事を念頭にスキーを上手にさせるのではなく、強く速いスキーを身につけられるように指導していきたく、2022'-2023'シーズンより全日本ジュニアチームのチーフコーチとして、日の丸を背中に背負ったこれからの選手を世界で活躍させる為に、ヨーロッパを中心に挑んでいきます。

私の携わってきたスキーアルペンは環境がとても求められるスポーツです。必ず雪が無ければいけません。雪上トレーニングが出来るコースが必要です。ヨーロッパには氷河があるので実際に雪上に立てる期間は1年のうち約9ヶ月。日本人はヨーロッパや南半球に行く事ではじめて夏の時期も雪上トレーニングをすることが可能になります。そこには莫大なお金が掛かり、時差もあり、行ったからには数ヶ月は自宅に帰る事も出来ず、スキーというスポーツを極める上で日本人にはかなり不利と言え、日本人特有の勤勉さ真面目さ、地道な努力が出来る気質を活かして、環境面で特に利のある北米勢、欧米勢と渡り合うため、限られた時間の中でトレーニング内容を濃くし1日も無駄にせず積み重ねた先に、選手が挑むレースで結果を出せた時、一歩前に進めた！今までの自分たちを超える事ができたと感じられました。2023'-2024'シーズンのチーム選手がワールドカップ出場の権利を掴み取った事、国内外のレースで表彰台の一番高い所に乗った選手を見た時は本当に嬉しく、更に高みを目指そうと実感できた瞬間でした。毎年、結果を残していかなければならないプレッシャーを持ちながらも選手と共に頂点を目指しています！