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GO BEYOND な

中村美里(ナカムラミサト)

柔道家

私が柔道に出会ったのは9歳の時でした。格闘技を習いたくて様々な競技を観に行く中で、小さい人が大きい人を投げているのを見て“かっこいい!”と思ったのがきっかけでした。すぐにのめり込んだ私は、小学校の卒業文集に将来の夢として「オリンピックに出場すること」と書き、色々な人に支えてもらいながら、北京・ロンドン・リオデジャネイロ大会と3度のオリンピックに出場し、2つのメダルを獲得しました。2022年4月に株式会社T-squarEを設立し、現在はフリー柔道アドバイザーとして、国内では小学生から大人向けの講演会や柔道教室、柔道チームの外部コーチ、テレビやラジオなどの解説者など、色々な側面から柔道の普及活動を行っています。海外においては、14歳から様々な国際大会や合宿へ参加して良きライバルたちと出会い、現在では講師として彼らと再会したり、新たな出会いがあったりと約30か国以上を訪問する中で、本当にたくさんの人々と交流を深めてきました。柔道は一度組み合うと、国籍や年齢、性別を超えてファミリーのように感じることが出来ます。それは礼に始まり礼に終わる柔道の精神、相手への敬意というものが柔道家たちに根付いているからだと思いますし、私が柔道を好きな理由の1つです。

振り返ると、私の人生にはたくさんの“きっかけ”が溢れていて、自分で気づいたものも周囲に与えてもらったもの、そのすべてが現在の自分を作っている大切な要素です。もしそれらのきっかけを素通りしてしまっていたら、自分がいかに恵まれた環境にいるか、どれだけ多くの人に支えられているか、柔道がどれほど好きか…といった、選手としても人としても大切なことに気づかず、また早い段階で引退して柔道から離れてしまっていたかもしれません。私たちに必要なのは、多くのきっかけに触れ、そこから気づきを得ることだと思います。これはアスリートに限った話ではなく、誰でもきっかけ1つで明日や未来が変わるかもしれないと感じています。現在はアドバイザーとして、培ってきた技術や経験、日本の柔道精神を国内外に伝えていますが、柔道の修行には終わりがないと日々感じさせられています。だからこそこれからも生涯現役として挑戦を続けながら、皆さんが柔道やスポーツを通じてきっかけに触れ合う場を提供し、可能性を広げるお手伝いをしていきたいと思っています。

世界の柔道家たちと闘う中で“超えた”と最初に感じたのは、高校1年生の時に初めて出場したシニアの国際大会でした。初戦の相手は、その年の世界選手権で優勝した選手でしたが、僅差で勝利して、そのあとも勝ち進み初優勝することが出来ました。その世界チャンピオンを超えたという経験は、当時の私にとってとても大きく、オリンピックや世界一という夢が、明確な目標に変わったきっかけとなりました。また、フリー柔道アドバイザーとして海外で指導する中でも、超えているなと感じる経験はいくつもあります。一番は言語の壁です。何度も訪れている海外ですが、仲間が一緒だったり通訳さんがいてくれたり、言葉に不安を感じることはほぼありませんでしたが、先日単身で2か国を回り指導をする機会がありました。元々他言語が話せるわけでもないので、短期間でちょっとした単語を覚え、不安いっぱいで海を渡りました。しかしそれはすぐに解消されました。やはり一度組み合えばそこから通じるものがあります。国や言語を超え、柔道という共通言語を通じて子どもから大人まで、たくさんの人々と真剣に柔道を学び合い、笑い合うことができ、改めて柔道のパワーを感じました。これからも、国や心の壁を超えて、多くの国の人々と交流を深めていきたいと思います。

GO-BEYONDER No.547

柔道家

中村美里

1989年4月28日生まれ。東京都八王子市出身。9歳の時に高尾警察で柔道を始める。中学生の時に親元を離れ寮生活をしながら柔道に取り組み、2年生で全国中学校体育大会とアジアジュニア選手権優勝。高校1年生では、日本一を決める講道館杯と国際大会・福岡国際に出場し、どちらもシニア初出場初優勝。19歳の時に、52kg級日本代表として北京オリンピックに出場し銅メダルを獲得。その後は世界選手権で3度優勝し、オリンピックにおいては北京大会に続き、ロンドン大会、リオデジャネイロ大会に出場し、リオでは2つ目の銅メダルを獲得。2017年に筑波大学の大学院に入学し、「柔道トップアスリートの妊娠・出産」をテーマに修士論文を執筆。2018年から2年連続で重量級を相手に戦う全日本皇后盃の東京都予選に出場。2019年には準々決勝まで勝ち進み、憧れの皇后盃出場を達成。2022年4月に株式会社T-squarE(ティースクエア)を設立し、フリー柔道アドバイザーとして活動を開始。人々に可能性を広げるきっかけを届けたいという想いで、子どもから大人、初心者からナショナルチームの選手・指導者に対して、日本柔道の精神とこれまで培ってきた技術や経験を伝えるべく取り組んでいる。

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2024年 スペイン・カナダ・ポーランド・ハンガリー・フィンランドで各200~300名を対象に柔道講習会開催
2023年 第32回東南アジア競技大会までの期間限定で、カンボジア代表のアシスタントコーチ就任      
     第19回アジア競技大会テレビ解説
2022年 ベルギー・カンボジア・フランスで柔道講習会開催
2019年 ブラジルナショナルチームの指導者を対象に講習会 全日本皇后盃の東京都予選ベスト8、本戦出場
2018年 第18回アジア競技大会テレビ解説
2017年 筑波大学大学院に入学
2016年 リオデジャネイロオリンピック出場、銅メダル獲得
2015年 世界選手権優勝 2014年 第17回アジア競技大会52kg級優勝
2012年 ロンドンオリンピック出場
2011年 世界選手権優勝
2010年 世界選手権準優勝 第16回アジア競技大会優勝
2009年 世界選手権優勝
2008年 北京オリンピック出場、銅メダル獲得
2005年 講道館杯、福岡国際優勝
2003年 全国中学校体育大会優勝

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