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GO BEYOND な 人
冨部柚三子(トンベユミコ)
セーラー
"経験で得た世界の壁を超えるための力、
プレイヤー兼指導者としてTOPを目指す"
私が10歳の頃、週末になると父とよく海に出掛けており、そこでヨットという乗り物に出会いました。初めて乗ったヨットは父の持つ小さなディンギーで、たまに舵を持たせてもらい自分で船を操縦することが楽しくて、次第に一人でも乗れるようになりたいと思うようになり、ジュニアヨット教室に通わせてもらうようになりました。海の上を風さえあれば走って行けるヨットの魅力にすぐに取り憑かれ、セーリング競技としてレースをしていくことにも興味を持ち、徐々にレースの世界へと入って行きました。
順位を競うセーリング競技は数日間に渡りレースを行い、その総合得点を競います。その日その時しか吹かない風や波を使って、船を常にベストなスピード・角度に保ちながら、速く走れるポジョンをライバルたちと争います。参加艇数が多ければ多いほど、参加者のレベルが高ければ高いほど、スタートからフィニィッシュまでの間、秒単位で刻々と変化していく風や波を、ライバルより良い条件を選んで前に出るということが難しくなります。そのために私たちは、地形・季節・天気・気温などで変化する風・波・潮流を予測するトレーニング、自分が今ベストと思えるポジションへ自艇を持っていくための操船のトレーニング、その際に同じ予測を立てているライバルとのポジション争いを制するための駆け引きのトレーニングを行っています。セーリング競技は自然を理解し、数秒先の風や波の変化を予測しライバルとのポジション争いを行う競技で、自然と技術が無駄なく融合されることによって制することができる競技です。
国体やユースの大会などで入賞し、順調に成績を伸ばしてきましたが、高校生のときに初めて参加した国際大会は、普段なら簡単に取れるはずのポジションを何人もいる上手な選手に奪われ、前を走ることが全くできずにほとんど最下位で大会を終えました。これが今でもよく覚えている、初めて日本と世界との差を痛感した大会でした。それと同時に世界でも戦っていけるようになりたい、そう思うきっかけとなった大会でもありました。
現在では経験を活かして、同じ思いや壁にぶつかっている学生を中心に指導者として指導活動を行いつつ、レベルの高い海外選手との練習を行い、自国開催である2020年東京オリンピックに向け技術の向上に取り組んでいます。
2度のコーチングから得た世界への挑戦
社会人になってから、オリンピックという舞台を目指して力をつけるために海外遠征にたくさん行きましたが、やはり世界の壁は並大抵の力で超えられるものではありませんでした。更に2度の大きな怪我に見舞われ、一時は競技から退くことも考えました。その時に得たのがコーチングの機会でした。客観的に競技を見ることで、自分が今まで気づかなかった弱点を見つけることができたのです。広い視野で風を読み、考える力を得て、再度世界に挑戦したいと感じて挑んだ時、今まで以上に戦えるという確信を得ました。
それから世界に挑戦するようになって、もう一つ感じた限界は一人での遠征でした。コーチのいない遠征は苦労することが多く、ときには他のチームの練習に混ぜてもらえないこともありました。このままでは世界に置いていかれる、コーチングを受けられる環境を作らなければならないと漠然と考えていました。
そんなある日、あるコーチに「君にコーチはいないの?ヨーロッパのレースを一人で回るなんてとんでもない。私たちのチームに入って一緒に練習しよう。」と声をかけてもらいました。それが今一緒にトレーニングをしているリトアニアのセーリングチームでした。コーチには30年の経験と五輪での銀メダル、世界選手権優勝というキャリアがあり、遠征のときに一緒に生活をしていく中で多くのことを学ぶことができています。経験に裏打ちされた確かな戦略眼と、失敗した時でも最小のリスクでリカバリーするノウハウを身近で学び、日々成長しています。
最初は自身がコーチングを行うことで競技を客観的に見る力を得て、現在は海外のコーチングから多くのことを学んでいます。これから始まるオリンピック選考に向けて、万全の状態でしっかり準備し、力をつけ、自分を信じて、東京五輪で形として残せるよう世界に挑戦していきます。
挑戦し続けることで、それを超え、目標を達成すること
私がここまで海外で活動できるようになるまでには少し時間がかかりました。その原因に、海外へ出て行くことへの躊躇がありました。世界で戦うにためにはもちろん日本の外に出なければならないのですが、この島国で生活してきた環境から抜け出すということが大きな壁だったのです。
セーリング競技は遠征の準備を全て自分で行います。航空券や宿の手配をし、空港に着いてから会場までの知らない土地を大きな荷物を持ってレンタカーやバスで移動し、自分の競技に使う船を現地の業者と連絡を取って借り、競技に臨みます。日本語の通じない長期間の海外遠征で、日本と同じコンディションが保てるのだろうか、生活はどのようにすれば良いのだろうか、という漠然とした不安が常にあり、一人で海外に行くことができませんでした。
これらの不安を乗り越えることができたのも私がコーチングをしたことがきっかけでした。コーチとして帯同するからには、選手に安心してレースに集中できる環境を作らなければならないと思い、様々なことを準備しました。遠征を無事に終えたときには、それらの経験が自信となり、今も日本人一人で海外を転戦することに不安を待たせることなく、支えてくれています。
そしてオリンピックという舞台を目指して海外での合宿や大会に参加することがベースとなり、コーチも得た今は、ただこの環境の中で戦うだけでなく、勝ちにいかなければなりません。日本と海外を行ったり来たりする中で、身体のコンディションを整え、ハードなトレーニングの中でも結果を出していくことは簡単ではありません。しかし、高校生のときに経験した悔しい思いを世界の舞台で晴らし、周りが驚くような結果を出すために日々の自分を超えていきたいと思っています。
GO-BEYONDER No.184
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セーラー
冨部柚三子
1990年7月21日、東京都生まれ。海とヨットが大好きな父親の影響で、小学生からジュニアヨット教室に通い、セーリング競技に興味を持ち始めレースの世界へ。国内のレースでは順調に成績を伸ばし2014年からはJSAFナショナルチームとして活躍。社会人になってからも経験を活かし、学生を中心として指導者としても活動をしつつ、代表選手として世界のTOPセーラーとなるため競技に取り組んでいる。