GO BEYOND な 人
川合美乃里(カワイミノリ)
プロサーファー
"前だけを見つめて
世界トップレベルで戦い続ける"
私がまだ幼かった頃、父のサーフィンを見に毎週のように家族で海へ行っていました。いつも父が波に乗る姿をみているだけだったのが退屈で、「私も一緒にしたい!」と思うようになり、母も含め家族みんなでサーフィンを始めたのがきっかけでした。
当時6歳だった私は水が怖くて顔がつけられなかったので、サーフィンをはじめた当初はゴーグルにライフジャケットで海に入っていました。しかし、練習をしていくうちに水への恐怖心よりも、波に乗る楽しさのほうがが増して、いつの間にか海に入ることが楽しみになっていました。
当時住んでいた家から近くの海までは、車で片道2時間もかかる場所にあったので、海のそばに暮らして毎日練習ができる他の選手がとても羨ましかったです。他の選手に追いつくために、平日は毎日スケートボードで練習をし、わずかな時間もサーフィンの技術につながることをしてきました。徐々に難しい技ができるようになってくると、自分のパフォーマンスにも自信が持てるようになり、海に行ける週末をいつも待ち遠しく感じていたことを覚えています。
1本の波に1人しか乗ってはいけないというのがサーフィンの基本的なルールです。制限時間内に乗ることのできた2本ライディングの合計が勝ち負けを決めますが、波のピークに最も近い選手に優先権があるため、運が悪い時は、いくら順番を待っても波に乗ることすらできずに負けることもありました。そんな悔しさを重ねながらも試合経験を積むことで実力が付き、徐々に国内大会で表彰台の中央に立つことも増えてきました。
試合での実績もついてきた2014年に、当時最年少の13歳という年齢でプロへの転向を決意しました。プロへの転向を決意した当初は反対をする人もいましたが、「自分の力を試し、トップクラスに挑戦したい!必ず結果を残していける!」という気持ちに不安はなく決意をしました。
そしてその結果として、ルーキーオブザイヤー (新人賞) をプロ1年目に最年少で獲得することができ、周囲にも認めてもらえるような成果を残すことができました。それ以来、自分を信じてチャレンジしていくことで結果はついてくるということを忘れないようにしています。目線は常に高く、前だけを見る事で前進を続けていくことができるものです。これからもどんな壁にぶつかったとしても挑戦心をもち果敢に向き合っていきます。
家族の支えが大きな力となり 再び波に向きあいプロへの転向
高校進学を機に徳島から千葉に移住し、毎日サーフィンの練習ができるとても素晴らしい環境になりました。「サーフィンに毎日打ち込むことができる環境にいればおのずと力が付き、大会でも結果を残していくことができる」そんなふうに期待を膨らませていましたが、現実はそう甘くありませんでした。この頃に出場した大会では満足のいく結果が残すことができない状況が続きました。
負けが続くにつれて気分も落ち込み、もう、サーフィンを辞めてしまいたいとすら思うようになりました。プロサーファーとしての壁を感じ、追い込まれ苦しい境地に立たされていました。
しかしそんな辛い状況で、私の力になってくれたのは他でもない家族です。辛く厳しいと感じる状況でも、絶対に今の努力は無駄にならないと両親が励ましてくれたのです。そんな支えもあり、再び以前のように波に向き合うことができるようになりました。そしてスランプから抜け出し、少しずつ満足のいく成績が残せるようになり、気が付くとプロツアー2年目にして最年少の年間グランドチャンピオンに輝くことができました。今となってはあの辛く苦しかった時間も、一回り大きくなるための重要な糧となる、必要不可欠な時間だったのだと感じています。あの時支えになってくれた家族には本当に感謝しています。
日本チャンピオンになれた事で、 "世界チャンピオン" になるという新たな目標ができました。そしてその目標を実現させるため、地道な努力を積み重ね、2017年5月に千葉で開催された世界大会「WQS3000 (ワールド クオリファイング シリーズ)」でそれまでの努力の成果と自分の力を試す機会をついに手にいれました。この大会で、日本人初となる優勝という快挙を成し遂げることができたのです。ついに "世界チャンピオン" のタイトルを手にすることができとても嬉しかったです。
世界チャンピオンのタイトルをとった勢いそのままに、その後に参戦した「WQS6000」大会では世界9位になり、最終的には「WQS世界ランキング」で21位という成績でこのシーズンを終えました。サーファーであれば誰もが憧れ、私もかねてからの憧れであった世界トップ17人のみが参加を許されるツアー「WCT (ワールド チャンピオンシップ ツアー)」入りに大きく近づくことができ、飛躍した1年になったように思います。
声援を追い風に、世界の海で夢を追う
今は世界トップ17人のWCTに入るため、世界トップレベルの選手も出場をするWQSに参戦しています。トップクラスの選手達のライディングに直面することで、技術面でもメンタル面でも刺激をもらうと同時に、自分のレベルがまだまだ追いついていない事を思い知らされます。しかし、一流選手達のパフォーマンスを学ぶことのできる絶好の機会でもあるので、チャンスをしっかりと活かし、自分の成長に繋げていきます。
サーフィンは2020年東京五輪の新種目に決まったものの、サーフィンが盛んな諸外国と違い、日本ではまだ競技スポーツとして十分に浸透していなないのが現実です。また、日本で競技していくことは、色々な面で環境が十分に整っていません。トップクラスに君臨している海外の選手に追いつくこと、そしてそれ以上のパフォーマンスで彼らに勝つことは、とても容易ではないと感じています。
しかし、私の「WCT入りして、ワールドチャンピオンになる」という夢を応援し、私と一緒に歩んでくれる家族や仲間、ファンの皆さまの期待の応えるためにも諦めるわけにはいきません。皆さまへの感謝の気持ちをいつも忘れず、謙虚な姿勢で今後も波に向き合っていきたいと思います。世界の高い壁を超える最初の日本人になれるようこれからも努力していきます。そしていつか私が日本のサーフィン界を牽引するような選手になり、もっと多くの人にサーフィンの魅力を発信していきたいと思います。
GO-BEYONDER No.164
プロサーファー
川合美乃里
2000年12月14日生まれ。徳島県出身のプロサーファー。競技歴10年。日本サーフィン界最年少となる13歳にしてプロへと転向を果たし、2017年5月に行われたWQS (ワールド クオリファイング シリーズ) 3000では日本人女子初となる優勝を果たし世界チャンピオンとなった。その後に参戦したWQS6000では世界9位、同じシーズンの世界ランキングは21位という好成績を残している。現在は世界ランキング上位17名が参戦するWCT (ワールド チャンピオンシップ ツアー) への参加を目標に世界各国の海で転戦を続けている。
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