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GO BEYOND な

大越龍之介(" オオコシリュウノスケ")

プロアルペンスキーヤー

アルペンスキーは「情報戦」
分析力とキャリアを活かし世界で戦う

私は雪国北海道でも有数の豪雪地帯である北海道倶知安町に生まれ、幼少の頃から生活のそばに雪がある環境で育ちました。スキーに興味を持つようになったのは、地元に近いニセコグランヒラフにて開催されていたスキーモーグルの大会へ両親に連れて行ってもらったことがきっかけです。メダリスト達の華麗な滑りに幼いながらに感激し、「自分もあんな風になりたい」と思いスキー選手を目指すようになりました。スキーを始めた当初の小学校低学年の頃はモーグル選手に憧れていましたが、友人の誘いで近所にあったアルペン競技のスキークラブ「ニセコ花園レーシング」に小学3年生の時に入会したことがきっかけで、人と速さを競うというアルペンスキーの面白さを知り夢中になっていきました。

それからは技術と成績を伸ばし、中学2年生の時に全国中学スキー大会で優勝をしたのを皮切りに、数々の大会で優勝・入賞を果たしました。高校1年生のシーズンからは、全日本アルペンナショナルチームのジュニア指定選手となり、国内大会から国際大会へと舞台を変えるようになりました。全国高校大会 (インターハイ) では2年連続2冠の合計4勝を達成、大学生になってからはナショナルチームのシニア指定選手となり、幼少の頃に憧れた世界選手権にも出場、初となる世界の舞台で28位という結果を残すなど順調に経験値を積み上げていきました。

すべてが順風満帆ということはもちろんなく、怪我や成績不振により苦しい時間を過ごしたこともあります。全日本強化指定選手からの選考漏れを経験したときの悔しさは今でも忘れられません。ですが、その悔しさも今の自分を作り出している重要な要素の一つであると思っています。2018年1月にスイスのウェンゲンで開催された世界最高峰のワールドカップでは自己ベストとなる19位という成績を残し、現在も進化を続け自分のベスト追い求めている最中です。

最大の夢であるワールドカップでの表彰台、オリンピックでのメダル獲得は今も実現が出来ていません。もう少しで越えることのできる壁、低いようで高い壁、いわゆる”世界の壁”を打ち崩し、アルペンスキーの頂点に立つとために、そして頂点に立つに値するアスリートを目指し日々奮闘中です。

2012年
全日本選手権 大回転 優勝
2014年
アジアコンチネンタルカップ「Far East Cup」総合優勝
2017年
全日本選手権 回転 優勝
アジアコンチネンタルカップ「Far East Cup」回転種目別優勝
2018年
FIS アルペンスキーワールドカップ スイス ウェンゲン大会回転19位

経験と実績、競技に向き合った時間が
進むべき道を教えてくれる

私の生まれ育った街は世界有数のリゾートであるニセコの麓であり、常に生活の傍にはスキーがありました。

必然的にスキーに出会い、練習に打ち込むことができ、結果的に、全国中学校・全国高等学校選手権などの国内大会のタイトルを全て獲得し、ステップアップを重ねたうえで世界への挑戦を開始しました。

世界に挑戦するにあたり立てた目標は、「世界でアルペンスキーのトップになる」ということ、具体的には「日本人で誰もなし得たことのないワールドカップで優勝、オリンピックでメダル獲得」を成し遂げることでした。

100分の1秒を競うアルペンスキーでトップになること、それを目指し無我夢中で突き進んだ結果、世界で転戦することが毎年のこととなり、ヨーロッパやアジア、南半球や北米など文字通り世界中のツアーを転戦している間に気が付くとベテランと呼ばれる歳になっていました。年齢を重ねることは競技によってはマイナスなイメージもあるかと思いますが、僕にとっては自分のベストリザルトが年齢と共に向上していっているため、今では歳を重ねることが楽しみでもあります。

滞在環境の整理、外国人コーチとのコミュニケーション、他国選手との情報交換など海外を転戦する中で、自ら多くのことにチャレンジしてきた結果わかったことがあります。それは、「自分が思うように動き、周りに働きかけることが自分にとって快適な環境を作る」ということです。人から与えられた環境で何かを成遂げることなどできません。自分にとっての最良の方法を自分自身で考え行動に移し環境を変化させていくことそれが重要なのだと選手生活の中で学びました。

海外での生活をもっと快適でスマートなものにしたうえで、誰も持っていない経験と実績を裏付けにレースに挑むことで、アルペンスキーの頂点に立つというチャレンジがより稔りあるものになるのではないかと信じています。

周りの選手たちよりも遠回りしてきた時間の分だけ、今は自分の選ぶべき、行くべき道を知っています。

日本人として誇りを持ち
自己発信をすることが取り巻く環境を進化させる

「何かを越えること、ステップアップして成長をとげていくこと」それは競技に取り組む時間以外にも感じる事ができます。海外生活のなかではごく普通に、日々の生活の中にあり、ふとした瞬間に得られるものです。海外で生活をおくるなかで身についていくそれまで知らなかった言葉や表現、習慣を学び、自分の生活に生かしていく瞬間があります。例えば、市場やレストランに行き、店員と言葉を交え価格交渉をしたり、今日のお勧めを聞いて、自分の気分と照らし合わせたりしたとき、今生活をしている場所が日本ではなく海外であるにも関わらず、なに不自由なく「当たり前の生活ができている」、「自分の生きている時間を過ごしている」と感じた時に、「超越できた」と感じる事ができます。

競技生活の中で「超越」を感じる瞬間は、「会話」の中にあります。アルペンスキーは「情報戦」です。多くのスキーブランドがヨーロッパに集中していることから情報はヨーロッパに集中する傾向があります。自ら少しでも最新の情報をリサーチし、最新の流れを掴むことが勝つために必要になります。情報を集約し、何が正しく、何が誤っているのか、メインストリームは何かという流れを掴み、その上でどれだけ速く滑れたかと情報を分析していきます。こういった情報の処理を行うためには言語を超えたコミュニケーション能力が試されます。

これまでの長い競技生活の中では、提供されるマテリアルも満足のいくものがなく、納得のいかないことばかりでした。自分が満足のいかない環境では、何も得るものはないと考え、自ら担当者と直談判し交渉を重ね、自分がよいと思える環境を作りだしてきました。言葉や国籍の垣根を超えた人間関係、信頼関係が築けたからこそ実現したことになります。一歩前に踏み出し選手としても、人としても前進していくためには、自分を取り巻く環境との「真のコミュニケーション」というものが必要不可欠であり、それを超えたところに「自分が求める情報」があり、「納得のいく成長」がありました。

今後、世界の舞台でさらに上のステージに行くためには、コミュニケーションの中に深く入り込む必要があります。中に入るということは、外国で臆することなく日本人というアイデンティティに誇りを持ち、自己主張を行い、私という存在を相手に植え付けるということです。今では多くの友人や関係者とファーストネームで呼び合うほど親しい仲になりましたが、それだけでは深く入り込んだコミュニケーションが取れているとは言えません。まだまだ不完全な状態であり、自分自身の気持ちの中に、常に「GO BEYOND.」をもち自分の中で作られる弱い自分を超えて、自己主張を続け相手に受け入れてもらう必要があります。日本人選手最年長のアルペンスキー日本代表としてこれからも超えて行くと思われるハードルを、恐れることなく軽々と超えていける存在になりたいと思います。

GO-BEYONDER No.162

プロアルペンスキーヤー

大越龍之介

1988年11月29日生まれ。北海道倶知安町出身。競技歴は20年。幼少期にアルペンスキーに魅せられ、競技を始める。高校時代にインターハイ2年連続2冠の4勝を達成。2018年1月のワールドカップにおいて自己ベストとなる19位の記録を残している。現在も世界各国でトレーニングと転戦を続けながら、日本人最年長アルペンスキーヤーとして世界選手権、ワールドカップでの表彰台を目指し奮闘している。

Instagram:https://www.instagram.com/ohkoshiryunosuke/

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HP:http://www.ohkoshiryunosuke.com

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