GO BEYOND な 人
三輪紘也(ミワヒロヤ)
プロサーファー
同じ波は二度とこない一瞬の中で
ベストを尽くすスポーツの魅力を追い求める
プロサーファーだった父の影響で、小学2年生でサーフィンを始めました。最初はなかなか波に乗ることが出来ませんでしたが、成功して長く波に乗れた時は本当にワクワクしてどんどんハマっていきました。やればやるほどできるようになるのが本当に楽しくて、だから今でも続けているのだと思います。
幼い頃は自分の技量と波のコンディションを理解することが出来ず、波が荒れている日でも「海に入りたい!」と言ってよく父を困らせたものです。頑なにボードを離さず、いつまでも泣いている僕を見兼ねた父が「じゃあ見ていてやるからやってみろ!」と一言。待っていましたと言わんばかりに僕は海へ飛び込んで行きました。しかし結果は案の定、顔に切り傷をつけて早々に海から上がる始末。とにかく夢中でした。
次第に本格的にサーフィンにのめり込み、大会にも出るようになりました。そして中学1年生の時に出場したアマチュアの全国大会で4位入賞したことがきっかけで、父と同じプロサーファーを目指そうと決心しました。
満を持してのプロへの転向、夢の実現にむけ世界各地の波で転戦
中学1年生で4位に入賞した年に僕は初めて海外へ渡りました。インドネシア・バリ島です。現地に着いた時の印象は、とにかく暑くて湿度がすごかったということでした。バリの波は日本では経験したことの無いAフレームのパーフェクトWAVEでした。その波は僕にとって大き過ぎず、小さ過ぎず、自分好みのジャストサイズの波でした。
2度目の海外となった場所はオーストラリア・ゴールドコーストです。ここで僕は初めてチャンピオンシップツアー (CT) の試合を目の前で観ることが出来ました。海外のトップ選手を間近に見ながら、すぐ隣でサーフィンをすることができました。それまで映像で観たものとは全く違い、彼らのパワー・スピード・迫力の並外れた凄さというものを肌で感じることができ、とても刺激的で、その全てに心が引きつけられました。サーフィンの魅力を改めて知った貴重な経験となりました。
高校在学中もサーフィン一色の生活を送っていました。小学生の頃からそうしてきたように、登校前の早朝と下校後の夕方は海に入り、サーフィンの練習に明け暮れました。海で早朝の練習を終え、すぐに自転車を40分こいで学校へと向かい、眠い目をこすりながら授業を受け、下校後はまたすぐにボードを抱えて海へ向かう、そんな毎日でした。
2017年4月インドネシア・バリ島で開催された日本プロサーフィン連盟 (JPSA) のプロトライアル大会に出場し、プロサーファーとなりました。プロ資格を取得し、自分にとっては世界のトップ選手になるという夢実現への第一歩となりました。
プロ資格を取得した後ではありましたが、「アマチュアで一番になりたい!大きなタイトルを取って自信をつけたい!」という目標があったのでアマチュアの大会への出場も続けてきました。2017年8月に地元静岡県の磐田市で開催された全日本選手権のジュニアクラスで悲願が実り、優勝することが出来ました。そして自分で掲げた目標通り、全世代の男子アマチュア選手の国内ランキングで年間トップに立つことが出来ました。9月には宮崎県で開催された世界ジュニア選手権に初出場を果たし、U-18 (18歳以下) ボーイズクラスで9位に入り、日本人トップの成績を収めることが出来ました。2017年は自信のついた1年となりました。
そして2018年4月からプロに転向し、ワールドサーフリーグ (WSL) に登録し、世界各国の波を相手に転戦する日々を過ごしています。ここから先はプロとしての覚悟と共に前進していきます。
プロとして飛躍するため トップレベルの波でパフォーマンスする
僕が見据えているのは、世界のトップ選手36人しか出場を許されていないチャンピオンツアーへの参戦です。そのために今はひとつ下のカテゴリー「クオリファイシリーズ」 (QS) の一番下の大会に出場してポイントを稼いでいるところです。
トップ36に入るためには最短でも2年はかかる長い道のりです。言葉や環境の壁もある上、経験豊富な優秀なサーファーが集まる大会であるため簡単には勝たせてもらえない世界だと予想していますが、僕はそれを受け止めしっかり心構えをして挑んでいきたいと思います。
世界の波でトップ選手達と互角に渡り合うため、毎年冬場にはサーファーの聖地ハワイのノースショアでトップレベルの波を肌で感じ修行に明け暮れています。
僕が初めてハワイで見た海はオアフ島のパイプライン。そこではワールドクオリファイシリーズ (QS) の試合が行われていました。僕が今まで見たことのない巨大な波がそこにはあり、皆こんなサイズの波で練習するのかと最初は驚きました。多くの選手がハワイの海で修行する理由がよく解りました。波が落ち着いてきて僕もパイプラインでサーフィンが出来る日が訪れた時は、感情が高ぶり興奮しました。ノースショアでの生活にも慣れ、僕は大きな波にもチャージ出来るようになり、次第にこのパイプラインで大きなバレル (巨大な筒状の波) に入り、写真を残してみたいと思うようになりました。
サーフィンは自然が相手のスポーツで、同じ波は二度と来ないし条件もそれぞれ違うものです。出会えた波に向き合い、その一瞬の中でベストを尽くすことがこのスポーツの難しさであり、魅力でもあると思います。海の中から見る朝焼けや夕焼けは特別な景色であり、大自然の壮大さを身近に感じながらのサーフィンはそこに挑戦をした人にだけ許される最高の体験です。
僕はサーフィンを通じて挨拶やマナーなどの人としての基本も学び大人になりました。そんなサーフィンが2020年東京五輪の追加種目に決まった時は、サーフィンがスポーツとしてもっと多くの人に広く認められるきっかけになると思い、とても嬉しかったです。正直、日本で開催されるので何としてでも出場したいです。そのためには海外の試合に積極的に出場して経験値と共に自分のレベルを上げ、身体をしっかりと作りスタミナをつけ、世界で活躍出来るパフォーマンスを目指していきます。
幼い頃、少し大きい波を超えられたように、アマチュア時代ずっと超えられずにいた優勝までの道のりを超えられたように、パイプラインの大きな波を超えられたように、今の僕を遥かに超える自分に出会えるまで挑戦し続けます。
GO-BEYONDER No.160
プロサーファー
三輪紘也
1999年2月24日生まれ。静岡県出身。プロサーファーの父親の影響で幼少期からサーフィンに親しむ。中学校1年生の時、アマチュア日本大会で4位入賞、19歳で男子アマチュア選手の国内ランキング年間トップに、世界のU-18 (18歳以下) ボーイズクラス9位になるなど国内外で成績を残している。海外での転戦を続けながら、2020年五輪出場を目標に奮闘をしている。
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