GO BEYOND な 人
深沢瑛里(フカサワエリ)
セーラー
空を飛ぶヨットで五輪メダルをつかむ!
私は、セーリング競技の「Nacra17F(※1)」という種目でオリンピック強化選手として活動し、現在は海外を拠点にヨーロッパの大会を転戦しています。日本人だけでなく海外の選手と戦っている、その経験をいかして、東京オリンピックでメダルを獲得できるようにレベルアップしていきたいと思います。
私がセーリングを始めたのは小学校3年生の時です。セーリングの体験広告を見つけ、海も近かったので実際に体験に行ったのがきっかけです。その時の勢いで始めてから今年で13年目になります。
ジュニアの頃からアジア大会や世界大会に出場させていただき、その経験もあって高校3年生ぐらいから本格的にオリンピックを目指したいと考えるようになりました。
オリンピック出場を目指すのは今回が2回目で、前回のオリンピックの時は最終選考まで行けたのですが、最後で出場権を取り逃がしました。僅差の戦いでの敗退でした。その年の全日本選手権大会で3連覇し、選考レースでも勝てると思っていただけに、非常に悔いの残る結果でした。その悔しさもあって、東京オリンピックも同じ種目の「49erFx」で目指そうとなりました。
新種目「空を飛ぶヨット」への転向
私は以前、2014年に開催されたRedBullの大会で準優勝し、その大会の主催者から招待を受け、ヨーロッパで外国人選手と2カ月間、新種目の「Nacra17F」で使用するヨットと似た船でトレーニングを積みました。その結果、他の日本人選手が持っていない「飛ぶ船」の技術を身に付けることができました。
新しい種目の「Nacra17F」は今までのセーリングの種目とは必要とする技術が違います。自分の経験や技術を考えると新種目の「Nacra17F」が適していると感じ、種目変更をしたのです。
変更から2年という月日は経ってしまいましたが、パートナーも無事見つかりました。これまでの経験を生かして、今年から東京オリンピックに向けた活動を始めています。
もちろん、オリンピックでメダルを獲得する事が最大の目標ですが、一方で、自分が広告塔となり、メディアやさまざまな人を通してセーリングを広め、次世代の選手を増やすことに貢献していきたいです。また、自分が世界で結果を残すことで、私を見てセーリングを始めたという子供たちが増えていけばいいなと思います。
日本のセーリングを変えるために海外へ
現在、セーリング競技はヨーロッパの選手が強いです。そして、ヨーロッパはセーリングの発展にも貢献していて、セーリング界の最先端を行っています。一方で日本はなかなか成績を残せていません。
理由として、ヨーロッパでは主流になってきている種目が、日本では主流ではなく、1~2チームしか活動していないなど、少しヨーロッパより遅れている現状があります。あわせて「新種目のヨットに乗る機会がない」「乗りたいけど、どうしたらいいか分からない」という声も聞きます。
私は海外で「Nacra17F」に使用するものと似た船に乗った初めての日本人です。僭越ながら、日本に「2人乗りの飛ぶ船」を紹介したと言ってもいいくらいです。それゆえ現在私がやっている事は、今までの日本のセーリング界を変えるのではないかと思っています。
また、海外で海外選手と練習をしてレベルアップするのと同時に、海外選手が私の名前を知っている、さらに「彼女は強い」と思われるほどの有名な選手になりたいです。そして「Nacra17F」という新種目が日本のセーリングの主流となるよう、もっと広めていきたいです。
そうすることで、私のようになりたいと思ってセーリングを始める女子選手も増えていけばいいなと思います。海外でチャレンジする事は、自分の夢をかなえるためでもありますが、そういう願いもあって決心をしました。
今の自分を超えて新しい自分を発見する
私は、日本で開催されたRedBullの大会に出場しました。その時主催者の目に留まって「私の国で2カ月間トレーニングをしないか」と誘われ、英語もあまり話せないまま一人で海を渡りました。
現地では常にフランス人と行動し、一緒にボートに乗って他のチームと練習。フランス語も英語も分からない状況で2カ月間過ごしました。初めはジェスチャーから始めて、徐々に英語に慣れて、セーリング関連の会話はできるようになりました。また、日常での会話も雰囲気や仕草などから単語を覚えて、フランス語も理解できるようになりました。
その中でセーリングという共通点があれば、誰とでも触れ合えて、みんな優しくしてくれることを知りました。時間とともに海外での生活にも慣れ、日本に帰るのが何となく寂しく感じるようになっていました。
セーリングという共通点があれば、言語を超えて会話ができる、自分次第でいくらでも外国人とコミュニケーションが取れる、努力次第で変わることができると実感しました。
これは海外での事に限りませんが、人は目標や夢があれば、どんな自分にもなれて、困難も乗り越えることができるのです。
見たことのない自分に出会える、新たな自分を見つけられる、だからこそ私は高みを見続ける。そしてさらに今の自分を越え、新しい自分を探します!
※1:「ナクラ17F」。2016年リオデジャネイロ五輪から正式採用されたセーリングの新種目。東京五輪から、使用するヨットが従来のタイプから、「フルフォイル艇」(艇全体を空中に浮かび上がらせた状態で滑走するタイプのヨット) に変更される。
GO-BEYONDER No.139
セーラー
深沢瑛里
1995年7月28日、神奈川県生まれ。競技人生13年目。セーリングを始めたのは小学校3年生。ジュニアの時から世界大会に出場、好成績を残す。2014年のRedBullの大会以降、新種目であるNacra17Fにシフト、東京オリンピック出場を狙う。現在の目標はオリンピック出場以外では、セーリングの普及。子どもがセーリングに憧れる環境づくりを目指している。
Instagram:https://www.instagram.com/eri_fukasawa_/