GO BEYOND な 人
山本純子(ヤマモトジュンコ)
アイスクロス・ダウンヒル選手/アイスホッケー選手
氷上の滑降レース「アイスクロス・ダウンヒル」で世界ランキング上位を目指す
私は、アイスクロス・ダウンヒルという氷上の滑降レースに参戦しています。アイスクロス・ダウンヒルというのは、街中やスキー場に設置された全長約300~600メートル、高低差約50メートルの氷の特設コースを4人の選手が、一斉に滑り降りるレースです。
アイスホッケー、ダウンヒル、スキー・スノーボードクロスなどの要素を取り入れたスポーツで、選手たちは、コース途中に設置されたヘアピンカーブやバンクコーナー、連続ウェーブや段差などの障害物をかわしつつ、猛スピードでコースを駆け抜けます。
大会には、世界各地で開催され世界ランキング上位選手などに出場資格が与えられるRed Bull Crashed Ice World Championshipsと、選手が運営しており誰でも参加できるRiders Cupがあります。選手は、大会で獲得したポイントで年間ランキングを競い、世界チャンピオンが決まります。
私は2010年に日本で開催された予選で優勝し、同年にカナダ・ケベックで開かれたRed Bull Crashed Ice World Championshipsに初出場しました。当時、女子のレースは、年に1度程度の開催でしたが、2015年からはツアーがスタートし、私は、その発足メンバーに選ばれました。現在は冬季に海外を転戦しながら、世界ランキング上位を目指しています。
仲間たちとの絆でアイスクロス・ダウンヒルを
ワールドワイドなスポーツに広げたい
今後の予定としては、今季2017-2018シーズン、アメリカ・フィンランド・フランス・カナダで開催されるCrashed Ice 4戦とRiders Cup1戦に参戦し、初優勝を目指します。その中で、まず毎回決勝戦に勝ち上がる安定した力を身に着け、最後は、表彰台の真ん中に立つ。それが、私の選手としての目標です。
また現在、「アイスクロス・ダウンヒルをワールドワイドなスポーツに広げよう」ということで、ATSXというアイスクロスの国際団体のもと、各国の協会やアスリートと協力し、競技の普及に努めています。その際、Facebookのグループを活用し、イベントのアイデアを出し合ったりトレーニングセッションの様子を紹介したりして、各国での活動を共有しています。
アイスクロス・ダウンヒルに取り組んでいる選手たちは、遠く離れていてもインターネットを通じて知る仲間の活躍を喜び、困った時には助け合うファミリーのような絆があります。大会は、その仲間たちと再会できる機会でもあり、レースで結果を残すことはもちろん、海外の選手と情報を共有しながら競技を発展させる役割も担っていきたいです。
スタートから自分の限界に挑戦して優勝を目指す!
2017年3月にカナダ・オタワで開催されたRed Bull Crashed Iceシーズン最終戦。初めて決勝戦に進んだ時の出来事です。
Crashed Ice女子の部は、予選で30人前後の選手が、コースを一人ずつ走るタイムトライアルを経て、上位16人が最終日のファイナルに進むことができます。
2015年から始まったツアーで、私は、予選のタイムトライアルを毎回10位前後で通過するのですが4人でのレースでは、なかなか勝ち上がることができませんでした。その大きな原因は、レースの中でチャレンジできていなかったからだと思います。
コースには、ジャンプ台やローラーなどのセクションがあるのですが、私は、セーフティに越えることばかり考えていました。練習からスピードコントロールをし、自分がどこまでできるのか試すことができていなかったのです。
その結果、本戦でも転倒せずに滑りきるだけのレースになってしまい、勝負できていない自分が情けなくて仕方ありませんでした。
「シーズン最後のレースは、後悔しないようにチャレンジする。」そう決めて臨んだ最終戦。私は、予選のタイムトライアルで、スタート直後に転倒してしまいました。
ダウンヒル競技で、スタートの転倒は致命的です。しかし、そこで失敗したことによって吹っ切れた私は、「どうせ転んだのなら、タイムトライアルの残りは、ノーブレーキで滑ってやろう。」と心に決めました。
そして、その結果、攻めのスケーティングでも後半は一度も転ぶことなく、予選タイム8位でファイナル進出を決めることができました。
「このコースとは、相性がいいのかもしれない。」そう思った私は、本戦でもスタートの着地に注意すると、あとは、「攻める」と頭の中で繰り返しながらレースを走りました。すると、初めて準決勝に勝ち上がることができ、さらに決勝戦に進むことができたのです。
自分の中の壁を超えることは、簡単なことではありません。時に、アクシデントが転機となり、自分の力を発見できることがあります。
その瞬間に出会えたのも、世界各地のレースをまわり、強い選手と自分との違いを探しながら、自分と向き合ってきたからだと思います。
迷うことなく、スタートから自分の限界に挑戦し、優勝を目指して戦っていきます!
GO-BEYONDER No.129
アイスクロス・ダウンヒル選手/アイスホッケー選手
山本純子
1982年生まれ。長野県出身のアイスホッケー選手にしてアイスクロス・ダウンヒル選手。2010年、日本での予選で優勝し、カナダ・ケベックで開催されたアイスクロス・ダウンヒルの世界選手権Red Bull Crashed Ice World Championshipsに初出場。2015年からスタートしたツアーでは発足メンバーに選ばれ、アイスクロス・ダウンヒル選手として冬季に海外を転戦しながら世界ランキング上位を目指す。