GO BEYOND な 人
豊田亜紗(トヨダアサ)
アルペンスノーボーダー
日本代表の意識と誇りを胸に。
東京都出身のアルペンスノーボーダーです。SAJ全日本チームの一員としてスノーボード・アルペン競技を行っています。また、大学生として、スノーボードの遠征・合宿以外の期間は、アメリカのダートマス大学(Dartmouth College)に在学しています。
スノーボードを始めたきっかけは、父の影響でした。何年か嫌々とやっていて、草レースなどに出ていた程度です。しかし、2010年の夏に本格的に競技をやろうと目覚めました。目覚めたきっかけは、カービングターンをする楽しさに気づいたことです。GSSというチームとニュージーランドに行った際に、壮大な雪景色の中でカービングターンを行い、嫌いなはずのスノーボードをいつの間にか好きになっていました。
東京都出身ではありますが、私はイギリス人やアメリカ人に囲まれて育った帰国子女であるためか、日本人である自覚が希薄でした。しかし、SAJ強化指定になり、国を代表するという経験を通して、日本人としての誇りを持てるようになったのです。
世界トップを目指しつつ、スノーボードの魅力を広めたい。
第一の目標は、世界のトップを目指しながら、アメリカと日本でスノーボード・アルペン競技の魅力を広げることです。しかし、私の目標はこれだけではありません。もともと私は、学業で世界を目指したいと考えていました。医学か公共経済学で世間に貢献したいと思っています。この考えは、スノーボードを本気で始めた今でも変わっていません。スノーボード競技をしながら、学業も絶対に犠牲にしないと欲張っています。私のその頑張りを支えてくれているのが、ダートマス大学です。残念なことに、他のIvy Leagueの大学では、そんな世界レベルのスポーツをやりながらではやっていけないと言われてしまったのです。しかし、ダートマス大学は違いました。なんと、冬季五輪代表を過去に130人以上も排出しているのです。ダートマス大学には、人生のあらゆる面で成功する学生を育てる環境があるとわかりました。2015年、無事ダートマス大学に合格できましたが、本当のチャレンジはそこからだったのです。
入学する少し前、猪谷千春さんとお話しする機会がありました。猪谷千春さんは、ダートマス大学の先輩であり、また、SAJの先輩でもある方です。そして、1956年のコルティナ・オリンピックで日本人として初めて冬季五輪メダリストとなった方でもあります。猪谷さんが私にお話しくださったのは「この道は辛くて大変で普通の学生生活・選手生活はできないから、何としても両方で成功する覚悟をしなさい」ということでした。入学してからわかったことですが、ダートマス大学の授業システムは非常に柔軟性があり、練習に打ち込みやすい環境であることは確かです。しかし、アスリート推薦で来た選手達の多くは、授業も比較的楽なコースを取っていることがほとんどでした。つまり、スポーツと学業の両方でトップを目指すということは、本当に大変なことだったのです。事前に猪谷さんに教えていただいた通り、日々両立に困り、精神的・身体的に追い込まれました。雪上にいても、学校にいても、周りに同じような行動を取っている人がいないため、孤独感を感じることも少なくありませんでした。あることに気づくまでは。
「Trust the Process」「Grind and Be grateful」
努力のプロセスを信じる大切さ。
そして、日々の生活のあまりの大変さに、先シーズン人生で初めて自分のポテンシャルを疑うようになりました。夢は一つでなければいけないのか?二つの目標を追求したら、どちらも成し遂げずに終わってしまうのか?
何度も挫折しそうになりました。しかし、ふと「Trust the Process」という言葉を思い出したのです。これは「壁にぶつかった時、その壁の高さに翻弄されることなく、精一杯自分が努力しているならそのプロセスを信じろ」という意味の言葉です。 また、もう1つ「Grind and Be grateful」という言葉も、私の心の拠り所となっています。
学業のトップを追求しながらスノーボードでも世界のトップを目指すことができる、このようなチャレンジができること自体がとても恵まれた環境です。辛い時には忘れてしまいがちなこの幸せを、素晴らしい機会を与えてくださる周囲の方々への感謝の気持ちを、常に忘れないことが大切だと改めて感じました。
また、難しいこと・壁が高いほどチャレンジできる自分自身に感謝をすることも。そしてその高い壁を”GO BEYOND.”= 超えていけるように、また、自分を信じて焦らず一歩一歩前に進めるように。そのために日々努力しています。
GO-BEYONDER No.075
アルペンスノーボーダー
豊田亜紗
1996年、東京都生まれ。父の影響でスノーボードを始めるも、最初は草レースに出場する程度だった。しかし、2010年にニュージーランドの壮大な雪景色の中で行うカービングターンの魅力に気づいてから、本格的にスノーボードに取り組みだす。2011-2012のシーズンには、SAJ国内強化指定選手になり、SAJ全日本ジュニア選手権GS 2位を獲得するなど、順調な滑り出し。2014 ~ 2015には、SAJ強化指定選手になると同時時にオリンピック強化指定選手にも。さらに高い目標へ向けて、チャレンジ継続中。
Facebook:https://www.facebook.com/asa.toyoda