GO BEYOND な 人
大月圭介(オオツキケイスケ)
ローラーダービー選手
ローラースケートの魅力発信と
知名度向上のため。
フラットトラックローラーダービーは、2005年にアメリカで誕生し、この10年の間に世界40ヶ国以上、約1500リーグでプレイされるまでに急発展しています。私が所属する日本男子チームは、2012年11月にたった4人のメンバーで創設、2014年開催の第一回ワールドカップ出場を目指し、まずは仲間を探すところからのスタートでした。仲間を増やすためにも、ローラースケート自体の魅力を伝えるだけでは足りません。日本ではまだなじみのないスポーツであるローラーダービーの認知度を向上させること、そして、競技者層の底を広げることが急務です。そこで、ビラ配りやスカウト、講習会や体験会など、選手やその家族、そして協力者と共に、普及活動や募集活動といった様々な活動に取り組みました。努力の甲斐あって何とか出場条件をクリア、世界の舞台に立つことができました。アジア唯一の出場ということもあり、世界中から歓迎され非常に素晴らしい経験をさせていただきました。
しかしながら結果は全敗、5戦5敗です。
その経験を活かし、2016年開催の第2回ワールドカップに向け、今回は早い段階から新しい選手の発掘と育成に力を注ぎました。その結果、3月に実施されたトライアウト(選考会)では、他のスポーツ界から転向してきた選手や、ローラーホッケーなど経験のある選手、アメリカのチームでプレイする選手など、バリエーション豊かな6名の新メンバーが、日本代表入りを果たすことになったのです。
国際交流の架け橋に。
前回のワールドカップ出場からの2年間、社会人アスリートであるがゆえの様々な時間的・金銭的困難を乗り越えてきました。チームでの全体練習、各々の日々のトレーニング、限られた条件下での対外試合を繰り返し、男子日本代表チームは着実に進化して来たと確信し乗り込んだのがカナダ・カルガリーの地です。
結果は、予選グループリーグ4戦4敗、本選(順位決定戦)2戦2勝。支援して下さった方々、ファンの皆様、スタッフ、そして家族… 皆様の期待に添えるよう、カナダの大舞台で、堂々と力の限り日本のダービーを発揮し、戦うことができました。
こうして私たちは国内を含め、世界中の様々なチームやスケーター、そして関係者にご協力いただき、この種目に取り組むことができています。スポーツは、国際交流の大きな架け橋となるコンテンツである、そのことを改めて実感した次第です。
この貴重な財産を我々だけに留めず、ダービーを通じて多くの人に還元し共有していくことで、支援して下さった方々に対する恩返しになればと思い日々活動しております。
今後についての目標は、大きく2つです。1つ目は、世界中のプレイヤーが集まる、男子ローラーダービーワールドカップにて、更に成績を上げること。2つ目は、アジア唯一の代表チームとして、日本にしかできないダービー戦術を追求し、世界と戦うことです。また、日本以外のアジア地域への普及活動も同時にできたらと考えております。
互いの壁を越えていく!ローラーダービーを通じた場面の共有と還元。
ローラーダービーに触れていると、いくつもの「GO BEYOND.」を感じますが、今回は大きく2つの点をご紹介します。
1点目は、女子リーグの皆さんとの関わり合いです。
ローラーダービーは、日本に上陸して間もないことと、男子リーグが1つと競技人口も少ない状況となっています。このことから、十分な練習環境(練習場所含む)や試合環境が極端に限られており、実戦感覚を養う環境や体制を作ることが非常に難しい状況です。海外では、毎週末のように試合やプロ選手などによるクリニックなどが開催されており、アメリカやヨーロッパなどの海外チームや選手から練習や試合などに対する支援の声もたくさんいただきました。しかし、私たちにとって海外遠征は、時間的にも費用的にもとても困難であり、断念せざるを得ません。そのような状況を知って、快く手を差し伸べてくれたのが、女子リーグの皆さんです。
TokyoRollerGirls/関東、KokeshiRollerDolls/沖縄、DevilDogDerbyDames/沖縄の皆さんは、日本国内の在日米軍基地を主体とする「国際機関WFTDA」に所属しています。日本国内にある「米国」在住の彼女たちと合同練習や練習試合を行うことで、私たち男子日本チームは多くのことを学ぶことができました。また、日本に旅行者として来る海外選手も多く、彼らから実戦で培った情報や技術指導などを受けることも多々あります。こういった機会は我々にとってとてもありがたいことです。国籍や性別を「超えていく」活動やその文化は、ローラーダービーならでは、と言っても過言ではありません。
2点目は、2回開催された男子ワールドカップでの経験です。
第一回大会において、私たちは事前情報も少なく、ワールドカップの規模さえ理解していませんでした。日本ではマイナースポーツであるため、なんとなくそのイメージのまま現地に赴くと、想像を超える世界が広がっていたのです。新参者である日本チームを温かく迎え入れてくれたことは勿論ですが、海外各国のサポーターは、各チームのサポーターであると同時に、「ローラーダービー」全体を応援してくれていました。それは、サポーターのみならず、選手・スタッフも同様です。
実際、第一回大会では、たったの11人で乗り込んだにもかかわらず、どこの参加国よりも声援が大きかったことには、私たち自身が一番驚きました。
それは、ローラーダービーの精神が、技術や得点だけではなく、心意気や姿勢をも評価することにあります。まじめにこつこつやってきた結果が、日本という遠い遠いアジアの端っこから「超えていく」ことができ、世界に受け入れられた瞬間だったのでしょう。
第2回大会では、更にそれを実感する出来事がありました。
それは、私たちのチームから、大会MVPが選出されたことです。それが何を意味するかは言うまでもありません。MVPの選出は、私たちにとってこの上ない喜びであると同時に、今までの努力がひとつ形になった、まさしく「超えた」瞬間でした。
試合終了のホイッスルが鳴った瞬間、国や立場に関係なく、競技者、スタッフ、サポーター皆が互いを労い讃える姿。それは、全てのスポーツが互いの壁を「超えていく」証しではないでしょうか。ローラーダービーの一選手として、もっとたくさんの方々(特に日本の皆さん)とその一場面を共有することが私たちの夢です。そのためにも、普及活動を持って、「超えていく」ことを続けていきたいと思っています。
GO-BEYONDER No.068
ローラーダービー選手
大月圭介
1977年、東京都出身。日本代表チームであるメンズローラーダービージャパンに所属。2011年に同チームの初期メンバーとして参加して以来、選手(ブロッカー)として広報担当としてチームを支え続けている。今後は、より高い成績を目指しつつ、ローラーダービーの普及にも邁進していく。
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