私は、日本人選手でいまだかつて誰も成し得ていない、クロスカントリースキー競技オリンピック・世界選手権でのメダル獲得を目指しています。海外の選手の強さを生で感じ取った私は、日本人との違いや差がなぜ生まれるのかを追求する必要があると考えました。そのため、専修大学4年生ですが、2015年より強豪ノルウェーのプロチームに加わり、世界レベルの技術と体力、精神力を学んでいます。

海外クロスカントリープレイヤーに追いつくために

私が行っているクロスカントリースキー競技は、スキーがヨーロッパから日本に伝わってきてから100年以上たちますが、まだオリンピックや世界選手権において日本人がメダルを獲得したことがありません。ジュニア世代では日本人でも世界に通用する選手が何人かいて、世界で戦えることも証明してきました。しかし、シニアになると、なぜか日本の選手は海外選手に差をつけられ、勝つことができなくなってしまうのです。どうしてシニアになると日本人は勝てなくなるのか、海外選手との差がなぜ生まれるのか、そういった疑問をずっと抱いていました。

私が活動拠点にノルウェーを選んだ理由は、ワールドカップや世界選手権、オリンピックなどの世界大会ではノルウェーの選手が上位を独占するほどの世界的に有名なスキー王国だからです。スキー王国のノルウェーがなぜそのような強さを誇っているのかを知りたい、そして自分自身がそのような高いレベルでトレーニングをしたい、勉強したいという思いもあり、単身でノルウェーに渡ることを決意しました。

様々な方に協力していただき、今は「Team Synnfjell」というノルウェーのチームに所属し活動を行っています。ここでトレーニング方法や指導論、生活習慣といった「これがノルウェーの強さだ」と思うことを学び、吸収していきたいと思っています。今まで誰もしてこなかった方法や道を歩んでみる、そして日本人初のメダリストになるというのが私の「チャレンジ」なのです。

日本のクロスカントリーチャレンジャー

ノルウェーのクロスカントリースキーチームに所属した日本人男子は私が初めてです。チームでどんなトレーニングを行っているのか、生活習慣はどういったものなのか、どんなことを考えているのかなど何もわからないまま、単身で渡りました。英語も通じますが、チーム内ではノルウェー語が飛び交い、何を話しているのかわからない。文化も食生活も違います。しかし、そんな中にチャレンジしていきたいと突き動かした原動力は「強くなりたい」ただその一心でした。

ノルウェーに渡って3週間後に、世界各国から国の代表選手が多く参加する世界大会レベルの国内大会に出場しました。私の結果は下から数えたほうが早い結果に。しかし、この大会で私はレベルの違いを強く感じたのと同時に、その理由が見えたのです。短期間で強くなれるほど簡単なものではない、何年も何年も積み重ねた努力やトレーニングがあるからだと。惨敗したからこそ見えてきた世界。四六時中トップレベルの選手とトレーニングや生活を共にし、肌で感じなければ「経験」や「強さの理由」ということに気づくことはできません。チャレンジしていく人間にしかわからない世界です。スポーツの世界に答えはないと思っています。自分自身も日本で学んできたトレーニングに自信を持って今までやってきました。そして、世界のトップレベルの選手たちのトレーニングというものも知りませんでした。

その誰も知らなかった知識、新しい世界を目の当たりにしたとき「越えていく」と感じたのです。結果を出すために、新たな世界を知り、チャレンジしていく人にしか見えない扉がある。私は自分の経験からそう強く感じています。世界を目指す選手は力尽きるまでその競技人生に身を投じ、多くの方々に支えられながら競技を続けています。そのため、世界一になることが支えてくださっている方々への最大の恩返しです。私も目標に向かって過酷なトレーニングにも耐え、闘い、ひた走っていきたいです。そして必ず日本人選手としてメダルを獲得し、また新たな世界に越えていきたいと思います。